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再生医療

2023/08/07
【培養幹細胞治療の学び】新法により研究開発から実用化までスピーディになった再生医療
前回は、2014年に施行された再生医療に関する法律のひとつ「再生医療等安全性確保法」について解説しました。今回は同時に施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」(改正薬事法)と、再生医療等安全性確保法において、審査を行う機関について説明します。
 

提供計画書を審査するのが「認定再生医療等委員会」

 

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国が定めた「再生医療等安全性確保法」により、治療の妥当性、安全性、医師体制、細胞加工管理体制が認められれば、再生医療による治療が可能になりました。
厚生労働省への届け出が必要なのですが、その前に医師や法律家が集まった委員会の承認も必要なのです。

医療や法律などの有識者で構成

認定再生医療等委員会のメンバー構成において、要件、基準が設けられています。構成要件はつぎの8つです。
 
1.分子生物学、細胞生物学、遺伝学、臨床薬理学、または病理学の専門家
2.再生医療等について十分な科学的知見及び医療上の識見を有する者
3.臨床医(現に診療に従事している医師または歯科医師。以下同じ)
4.細胞培養加工に関する識見を有する者
5.医学または医療分野における人権の尊重に関して理解のある、法律に関する専門家
6.生命倫理に関する識見を有する者
7.生物統計その他の臨床研究に関する識見を有する者
8.第一号から前号以外の一般の者
 
ほかに基準として、男性および女性がそれぞれ2名以上含まれること、再生医療等委員会を設置する者と利害関係がない者が2名以上含まれることがあります。
 
認定再生医療等委員会は日本全国に50団体ほどありますが、現状は東京などの都市部に集中しています。特に高度な審査能力や第三者性を有する委員会は「特定」認定再生医療等委員会と呼ばれ、第一種と第二種の審査に携わります。
 

(特定)認定再生医療等委員会の業務

(特定)認定再生医療等委員会は、医療機関から提出された計画が厚生労働省の定めた基準に合致しているかなどを審査し、意見を述べます。
審査に合格し、再生医療の治療が始まったあとも定期的に報告を受け、再生医療等に起因する病気や障害などが起きたときは原因を究明し、場合によっては再生医療の提供を中止するよう申し渡すこともあります。
 
私もとある特定認定委員会のメンバーに入りました。2番目の「再生医療等について十分な科学的知見及び医療上の識見を有する者」という立場で参加しています。
主な仕事を挙げると、医療機関が提出した論文や動物実験データなどを精査したうえで、質疑応答を行います。同じ治療法を提出したAとBの医療機関があったとして、Aは承認されたけれど、Bは審査が通らないケースがあり得ます。医療内容だけをチェックしているだけではなく、医療従事者の知識、見解、倫理観も含めて検討していく必要があります。ですから、(特定)認定再生医療等委員会には幅広い分野の専門家が必要なのです。

 

薬機法により、開発から臨床までの期間が短くなった

「再生医療等安全性確保法」と同時に施行されたのが、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」です。この法律によって、再生医療に関連する医療機器や医薬品は、ほかの分野に比べて開発から臨床までの期間を短くすることができるようになりました。

一般的な医薬品の承認プロセス

一般的な医療機器や医薬品は承認されて患者様に届くまで、約10年かかるのが普通です。厚生労働省の承認を得るまでには、次の段階を経なければなりません。
 
1.基礎研究
2、非臨床試験
3.臨床試験
  …第Ⅰ相試験
   第Ⅱ相試験
   第Ⅲ相試験
4.承認審査
5.価格の設定、販売
 
細かい説明は省きますが、何段階もの臨床試験や審査を通ってようやく私たちのもとに新約や、新しい治療法が届くのです。
 

早く治療を提供するために臨床試験期間を短縮

再生医療では、臨床試験を経て承認されるプロセスが免除されました。もちろん、治療の報告と検討の義務はありますが、これは画期的なことです。つまり、厚生労働省が再生医療の可能性を認めているといえるのではないでしょうか。
 
ヒトの細胞を治療に用いるため、細胞を採取する人の個人差によって品質が均一ではなく、臨床試験データの収集や評価に長い時間がかかっていました。しかし、患者様に早く治療を提供するために臨床試験期間を短縮し、有効性、安全性が確認できた時点で製品化できることになりました。
現状では、世界のなかで日本はもっとも短期間で再生医療製品が承認される国なのです。

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