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再生医療

2023/07/10
【培養幹細胞治療の学び】培養皮膚を用いた火傷治療からスタートした再生医療のあゆみとは
2012年に山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞してから、日本でも再生医療への関心が高まってきました。日本のみならず世界中で研究がなされ、1980年代から再生医療が本格的に行われるようになりました。
今回は、再生医療が発展するまでのあゆみをお話ししましょう。

 

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再生医療第一号はアメリカでの火傷治療だった

病気やけがで失われた組織を蘇らせる再生医療。1970年代には、マサチューセッツ工科大学のハワード・グリーン博士らによって、マウスの皮膚細胞を用いた培養方法が確立されていました。皮膚は最大の臓器と言われていて、人工的な培養技術の開発が進められていたのです。
実際の医療現場で培養皮膚を用いた治療が行われたのは、1983年のことです。アメリカのワイオミング州で、男の子2人が皮膚の95%も焼けるほどの火傷を負いました。当時の医療では助かる見込みはありませんでしたが、担当医師が焼けずに残った皮膚を切り取り、グリーン博士に送ったのです。皮膚の細胞を採り出し、培養してたくさんの皮膚をつくり、その皮膚を数回に分けて移植したことで、彼らは助かったのです。
これを機に皮膚細胞の培養研究が進み、日本では2007年にヒトの細胞と組織を活用した医療用自家培養皮膚が製品化されました。2009年からは保険適用となり、熱傷や巨大母斑などの治療に用いられています。
 

世界に衝撃を与えたクローンヒツジとバカンティマウスの誕生

1990年代後半は、再生医療の分野で衝撃的なニュースが続きました。まず、世界を驚かせたのは、1996年にスコットランドで誕生した体細胞クローンヒツジです。このヒツジは雌ヒツジの乳腺細胞核を培養した受精卵を、別の雌ヒツジの子宮に移植することで生まれました。40歳以上なら、ドリーという名前を覚えている人も多いのではないでしょうか。
ドリーは、世界初の哺乳類の体細胞クローンであり、乳腺細胞を提供した親ヒツジと全く同じ遺伝子であることが話題となりました。
 
翌年、1997年に注目を集めたのが、背中に大きな人間の耳をはやしたマウス写真です。ウシの軟骨細胞を培養し、型に入れて耳の形にしたものを型ごとマウスの皮膚に移植したのです。作製者は、マサチューセッツ大学医学部の麻酔科医だったチャールズ・バカンティ医師で、このマウスは「バカンティマウス」や「ミミネズミ」と呼ばれています。
耳や膝軟骨などの軟骨組織は、血流がないので自己再生能力が乏しく、けがをすると治りにくい組織です。また、生まれつき耳が小さい、耳がないという人もいるためその治療に活かせるかもしれないと、バカンティマウスの発表は画期的でした。
培養軟骨による耳の再生医療の研究は今も続けられていますが、治療は確立していません。移植しても形が崩れてしまうからです。もし、培養軟骨を用いた再生医療が確立されれば、耳だけでなく鼻の損傷の再建も可能になるでしょう。
 

膝関節の修復に自家培養軟骨「ジャック」を活用

耳の治療において培養軟骨を使用するのは難しいのですが、膝関節の修復に活用されています。しかし、患者数が非常に多い変形性膝関節症には使用が認められていません。2007年に登場した自家培養表皮「ジェイス」に続き、日本で2番目に認可されたのが、自家培養軟骨です。2012年に日本企業のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングが「ジャック」という名称で製品化しました。ちなみに、この企業はアメリカで開発された自家培養表皮「ジェイス」の日本での生産管理をしています。

 

生きた細胞を使って失った組織を人工的につくる「ティッシュエンジニアリング」

培養技術を使い再生医療の製品を開発、製造しているのが、前述のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングです。企業名にもある「ティッシュエンジニアリング」は、再生医療を語るうえでキーワードの一つ。これは、1993年にアメリカの医師と、工学者が提唱した新しい医療の考え方で、「生きた細胞を使い、機能を失った組織や臓器を人工的につくり、本来の機能をできる限り保持した状態にする」ことです。
ティッシュ(生体の組織)とエンジニアリング(工学)を合わせた言葉で、日本では「組織工学」と表記されることもあります。
この技術が発展すれば、事故で失われた体の一部や手術で切除した臓器を再現できるのです。2021年4月の段階で骨や軟骨、血管、膀胱、皮膚、筋肉の修復、損傷したものと置き換える治療法として活用されつつあります。
 
しかし、形をつくるティッシュエンジニアリングを用いた治療は、処置や手術が必要になるため患者様にとって負担は少なくありません。リスクも否定できません。
私たちのクリニックでは、もう一つの再生医療である「セルセラピー」を採用しています。これは、形をつくったものを移植するのではなく、培養した細胞を患部に直接注射したり、点滴で体内に入れたりする治療法です。
どちらが優れているということはなく、どちらも進化途上の治療法です。症状を多角的に判断し、患者様と対話をしながらベストな選択をすることが医師としては大切だと考えています。
セルセラピーの治療法については、改めてお話ししましょう。

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