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再生医療

2022/12/16
間葉系幹細胞の歴史と再生医療で用いた時にどのような効果があるのか

こんにちは。アヴェニューセルクリニック院長の井上啓太(いのうえけいた)です。

井上先生プロフィール入り.png

 

 

前回、間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)は体の細胞の親玉、ES細胞・iPS細胞の違いなどの概要について説明しました。

今回は、間葉系幹細胞のの発見の経緯と再生医療で用いた時にどのような効果があるのか詳しく解説していきます。

前回のブログはこちらをご覧ください。



肌再生治療なぜいま脂肪幹細胞なのか

 

間葉系幹細胞の歴史

最初に間葉系幹細胞の発見は、骨髄の中から発見されました。

 

間葉系幹細胞が発見された「骨髄」に存在する幹細胞

その骨髄の中には、2種類の幹細胞があります。

一つは造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)と、もう一つは間葉系幹細胞です。

 

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間葉系幹細胞と造血幹細胞の違い

1960年代に、白血病の治療として骨髄移植が始まりました。

原子爆弾などで全身に放射線を浴びた際に、骨髄の機能がなくなり血液を作ることができなくなり白血病になってしまいます。

骨髄から血液を作る機能がなくなってしまうため、これを骨髄移植で治療しようという研究の過程で造血幹細胞を発見したのが、

ジェームズ・ティル先生アーネスト・マカロック先生という方です。

 

赤血球白血球血小板リンパ球などの血液細胞のもとになる幹細胞があり、それが造血幹細胞であることが分かりました。

造血幹細胞を移植すると、白血病の患者さんがまた血液を作れるようになります。

また、その研究の過程で、アレクサンダーフリードシュタインという研究者によって間葉系幹細胞が発見されました。

10万個の骨髄細胞の中に1個という確率で存在する珍しい細胞が間葉系幹細胞と名付けられました。

研究を進めていくと、造血幹細胞の働きを骨髄の中でサポートする機能を持っているということがわかってきました。

さらに骨や脂肪・筋肉・血管など色々なものに変化する性質があるということもわかってきました。

他の組織に変化していくので、再生医療に使えるのではないかという事で今日まで研究され、臨床応用が始まりました。

 

 

脂肪由来間葉系幹細胞の発見

2000年代の初頭に、間葉系幹細胞は骨髄だけではなく、他の場所からも採れるという事がわかってきました。

それが現在主流となっている皮下脂肪(ひかしぼう)から採取する間葉系幹細胞です。

脂肪吸引という手術後の脂肪の中を調べてみたら、間葉系幹細胞が存在している事がわかりました。

骨髄から間葉系幹細胞を採取するためには、全身麻酔をかけて太い注射針で骨髄の中から抽出する必要があります。

一方、脂肪の中の間葉系幹細胞はお腹の脂肪を少し採取すれば済みますので、患者様の負担がかなり減ります。

当院と東京大学整形外科が共同で開発したTOPs細胞は、さらに少ない脂肪組織から良質な細胞に培養することができます。

 

TOPs細胞.png

 

間葉系幹細胞の3つの特徴

 

3points.jpg

 

1、生体維持機能

体の機能を維持し、恒常性をサポートする役割があります。
これはホメオスタシス(生体恒常性)とも呼ばれています。

 

2、抗炎症作用

風邪を引いたり、怪我をしたりすると炎症が起きます。

どこか不調があるとそこが赤くなったり痛くなったりしますが、それは炎症によるものです。

間葉系幹細胞には、その炎症を鎮める役割があります。

 

3、免疫調整能

本来、感染症など外からの攻撃に対抗するのが免疫の機能です。

しかし、この免疫機能も暴走してしまう事があります。

アレルギーも免疫の暴走のひとつです。

また、免疫細胞が自分の体を攻撃してしまう状態を自己免疫疾患といいます。

間葉系幹細胞には、アレルギーや自己免疫疾患を緩和する働きがあると考えられています。

 

 

 

 

次回は、この間葉系幹細胞の3つの機能についても解説していきます。

 

間葉系幹細胞の歴史まとめ

間葉系幹細胞の歴史は、骨髄由来幹細胞から始まり、研究が重ねられ脂肪由来幹細胞が発見されました。

現在は、脂肪吸引ではなく、小さい脂肪片から培養できる技術も開発されました。

この脂肪幹細胞(TOPs細胞)を用いた肌の再生医療・若返り治療について今後も解説していきます。

 

今回の内容は動画でもご覧いただけます。

<記事更新:2024年1月22日>

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