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再生医療

2023/12/18
【培養幹細胞治療の学び】失われた機能の回復が期待できる再生医療は脳梗塞やALSにも用いられるように
膝関節や靭帯のように患部に直接注射をできればいいのですが、そうでない病気の場合は点滴を用います。静脈点滴で血流にのせて損傷部位まで幹細胞を届ける方法です。2回に分け、どんな病気の治療に役立てているかを紹介します。前編では、脳梗塞後遺症とALS(筋萎縮性側索硬化症)についてです。
 
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血液にのせて幹細胞を運び損傷部位を修復する静脈点滴治療

患者様から採取した幹細胞を分離、培養して治療をします。この培養した幹細胞を直接患部に注入できる場合は注射で行いますが、脳や肺、神経系といった直接注射ができない部位には点滴療法を用います。
血管は全身に張り巡らされている、いわば輸送経路。静脈点滴によって注入された幹細胞が血液の流れとともに運ばれ、損傷部位に届くというわけです。
しかし、残念ながら現時点ではすべての臓器に効果があるとは言えません。また、高度な技術と知識が必要とされる幹細胞点滴治療は、受けられる医療機関が限られているのが実情です。
 
医学論文で再生医療の効果があったと報告されているなかで、当クリニックでも特化して行っている点滴治療についてお話しします。
 

しびれや記憶障害など脳梗塞後遺症の改善に

脳梗塞とは、脳の血管が詰まって血流が途絶えることで、神経細胞が壊死してしまう病気です。昔は死亡率の高い病気でしたが、急性期医療の発達で死亡率は低下しました。しかし、高齢化社会に伴い、患者数は増加傾向にあります。
急性期医療が発達したといっても、発症後すぐに最適な医療を受けられるケースは限られています。脳梗塞でダメージを受けた部位によっては、さまざまな後遺症が残る場合も。
慢性期になると有効な治療法がほとんどなく、介護保険における要介護認定患者の原因疾患のうち、今も脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の総称)が1位を占めています。
 

重度、軽度にかかわらず後遺症の改善を望む患者様がほとんど

脳梗塞の後遺症は、麻痺、しびれ、めまいなどの運動障害と、認知症、記憶障害、言語障害などの高次脳機能障害と大きく二つに分けられます。日常生活に支障をきたすような後遺症はもちろんのこと、軽度の後遺症を抱える患者様の多くも症状の解消や軽減を望んでいます。
後遺症に対する医療も進歩し、リハビリテーションや内服薬で対応していますが、その効果も限定的というのが実情。
 

脳梗塞後遺症の治療で期待される間葉系幹細胞治療

発症して一定の期間が過ぎると、機能回復はほぼ望めず現状を維持することが精いっぱい。そこで、注目を集めているのが間葉系幹細胞による治療です。自分の骨髄や脂肪の中に存在する間葉系幹細胞を体外で培養し、量を増やしてから点滴で体内に戻す治療法で、個人差はありますが改善が見られるという報告が国内外から相次ぐようになりました。
 
患者様の症状により骨髄由来か、脂肪由来かを判断します。骨髄幹細胞の場合は、腰の皮膚を3㎜ほど切開し、専用の器具を使って骨髄液を採取します。脂肪幹細胞の場合は、おへその周辺を4㎜ほど切開して脂肪を米粒3~4個分を取り出して培養します。この傷はほとんど目立たず、痛みもほぼないので体に大きな負担をかけることなくできます。培養期間には個人差があり、骨髄幹細胞を用いる場合は、約1カ月かかります。
 

後遺症のほか肝臓や血管などさまざまな部位の改善が見られる

点滴で静脈注射された間葉系幹細胞は、傷ついた増改や組織に自らが向いその組織を修復するように働きかけます。
脳に新たな血管網が構築され、脳の血流がよくなります。また、神経再生作用により脳梗塞後遺症の運動神経障害や認知症などの高次脳機能障害に対しての改善も期待できます。
医学論文では、脳梗塞の後遺症だけでなく肺疾患、糖尿病、肝硬変などの疾患に対しても効果が得られたという報告もあります。幹細胞を静脈投与することで、血管を通って脳だけでなく肺や肝臓などあらゆる部位の修復を行ってくれていることが示されているのです。
 
加齢によってほとんどの人に起こる小さな脳梗塞は、認知症の初期症状の原因のひとつにもなります。物忘れがひどくなったり、怒りっぽくなるといった症状ですが、これらもこの治療によって改善が期待できます。
当クリニックでこれまで脳梗塞後遺症の治療を受けた患者様からは、よく眠れるようになった、イライラしなくなった、集中できる時間が長くなった、疲れにくくなった、肌にハリを感じるようになったという声が寄せられています。
 ただ、効果は患者様によってさまざまなので、共通した効果が得られるわけではありません。
 
 

筋肉が衰えていくALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療の可能性

ALSとは、手足、のど、舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々に痩せて衰えていく進行性の病気です。筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かすための運動神経系(運動ニューロン)が障害を受け、脳から体の運動器官に「手を動かせ」といった命令が伝わらなくなり思うように体が動かせなくなるのです。
手足のしびれ、話しにくい、食べ物を飲み込みにくいという、今までは普通にできていたことができなくなる症状が起こり始めます。進行すると、食事ができなくなったり(嚥下障害)、寝たきりになったり(運動障害)、人工呼吸器なしでは呼吸ができなくなって(呼吸筋麻痺)死に至ります。
 
前述の通り、筋肉自体に問題が生じるのではなく、脳の指令がうまく伝達されないことで体が動かせなくなり、体を支えている筋肉が弱り、筋力が低下する悪循環が起きるのがALSです。
 
まだ正確に原因は解明されていませんが、老化による神経細胞の変性と細胞の減少が関連していると言われています。現在も日々、全世界の研究者が原因や治療法を研究していますが、どちらもまだ確立されていないのが現状です。
 

幹細胞治療によってALSの症状の進行を遅らせることに期待

現状では根本的な治療法がなく、内服薬(リルゾール)や注射薬(エダラボン)、リハビリで運動機能の低下を遅らせたり、生命予後を延長させたりすることができるようになっていますが、効果は限定的です。未だ死に至る病であることは変わりありません。
そんななか、幹細胞を用いた治療がALSに有用であることがわかってきました。完全に進行を止め、完治させることは難しいのですが、ALSによる症状を回復させることや、進行を遅らせることができるとわかってきました。しかし、それに反論する報告や意見もあり評価はまだ定まっていません。
 
当クリニックでは、「有効な可能性がある」という立場で2018年から幹細胞を用いた治療を始めました。
患者様のおへその周辺から採取した脂肪から幹細胞を分離、培養して点滴で投与します。血液にのって傷ついた臓器や組織に自らが向い、その組織を修復するように働きかけて進行を遅らせるのです。
残念ながら、症状の進行が止まったり、明らかに改善されたりするというわけではありません。
 
当クリニックは、厚生労働省へ自己骨髄由来間葉系幹細胞と自己脂肪由来間葉系幹細胞の点滴投与の第二種再生医療等提供計画を提出済みのクリニックです。厚生労働省のホームページを見て受診される方が多くいらっしゃいますが、神経内科やリハビリテーションの医師と積極的にコンタクトをとりながら現在行っている治療法と並行して幹細胞治療を希望する方を対象に治療を行っています。

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