当院ではリンパ浮腫診療ガイドライン(日本リンパ浮腫研究会編)に基づいて総合的に治療をおこないます。主なリンパ浮腫治療法のうちエビデンスのあるものをまとめると、次のようになります。
治療法 | 推奨度 | ||
---|---|---|---|
上肢 | 下肢 | ||
理学療法 | 弾性包帯(バンデージ) | ◎ | ◎ |
弾性着衣(ストッキング) | ◎ | ○ | |
リンパドレナージ | ○ | ○ | |
運動療法 | ◎ | ○ | |
手術療法 | リンパ管細静脈吻合 | ○ | ○ |
リンパ節移植 | ○ | ○ | |
脂肪吸引 | ○ | ○ | |
その他 | スキンケア | ◎ | ◎ |
漢方薬 | △ | △ |
このうち、弾性包帯(多層包帯法MLLB: multi-layer lymphedema bandaging)およびスキンケアは特に推奨度が高く、リンパ浮腫に対する第一選択の治療法です。しかし、弾性包帯やスキンケアは対症療法であり、これらのみで完治することは少なく、手術療法を併用することにより生活の質(QOL: quality of life)が向上します。手術療法は効果の立証されている3つの方法、リンパ管細静脈吻合、リンパ節移植、脂肪吸引から、症状に合わせて選択します。
当院では、まず、弾性包帯(バンデージ)または弾性着衣(弾性ストッキング)による治療およびスキンケアがしっかりできているか確認します。既に理学療法のためにかかりつけ医に通院されていて、治療が順調な患者様は引き続き通院して頂いて構いません。うまく弾性包帯が巻けない、弾性ストッキングがあっているか不安など、何か問題があるようでしたら当院で一から指導いたします。
弾性包帯(バンデージ)または弾性着衣(弾性ストッキング)による治療が十分に行われており、それでも症状が固定または進行が止まらない方に対して、発症してからの時間、症状、リンパ管造影の結果 、患者様の希望などを考慮して手術方法を選択します。
■ 4病期分類 国際リンパ学会International Society of Lymphology:ISL
病 期 |
0期 | リンパ液輸送が障害されているが、浮腫が明らかでない潜在性または無症侯性の病態 |
Ⅰ期 | 比較的蛋白成分が多い組織間液が貯蓄しているが、まだ初期であり、四肢を挙げることにより治まる。 圧痕がみられることもある。 |
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Ⅱ期 | 四肢の拳上だけではほとんど組織の腫脹が改善しなくなり、圧痕がはっきりする。 | |
Ⅱ期後期 | 組織の線維化がみられ、圧痕がみられなくなる。 | |
Ⅲ期 | 圧痕がみられないリンパ液うっ滯性像皮症のほか、アカントーシス(表皮肥厚)、 脂肪沈着などの皮膚変化がみられるようになる。 |
0期 (症状なし) |
Ⅰ期 (寝ると治まる ムクミ) |
Ⅱ期 (寝ても治らない、 押すとへこむムクミ) |
Ⅱ期後期 (押しても へこまないムクミ) |
Ⅲ期 (皮膚が固く厚い、 色素沈着がある) |
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治 療 法 |
弾性ストッキング | ◎ | ◎ | ○ | - | - |
バンデージ | - | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |
リンパ管細静脈吻合 | - | ○ | ◎ | ◎ | - | |
脂肪吸引 | - | - | - | ○ | ◎ | |
手術療法 | - | - | - | ○ | ◎ |