膝や腰に痛みがある場合、なるべく早い段階で整形外科を受診しましょうと
前回お話ししました。病院での診断、治療はもちろん大切ですが、日常生活の中で膝や腰に負担をかけないことも症状の悪化を防ぐためには必要です。
そこで、普段の生活で心がけたいことを松﨑時夫医師に教えてもらいました。
運動習慣を身につけ体重増加を防ぎ膝痛を軽減
体重が増えれば増えるほど、体を支える背骨や骨盤、膝に負荷がかかります。肥満傾向にある人ほど、膝や腰の痛みに悩まされているのではないでしょうか。
腰と膝への負担を減らすために、まずは次の3つを実践してください。
前傾姿勢はNG 正しい姿勢を保つこと
デスクワークが多い現代人。無意識のうちに前傾姿勢になっていませんか? 丸まった背中では腰や膝に負担がかかり、痛みが生じてしまいます。座っているときだけでなく、歩いているとき、信号待ちをしているときなど、常に姿勢を正すことを意識してください。
正しい姿勢とは、耳、肩、腰、膝、くるぶしが一直線になる状態です。胸を張りすぎるのもよくありません。すでに背中が丸まっている、腰が曲がっている人でも、「正しい姿勢」を意識し続けることで、少しずつ改善がみられるはずです。
体重管理をし、太らないこと
膝にかかる負荷は平地の歩行で体重の2~3倍、階段の上り下りで体重の6~7倍かかると言われています。さらに、体重が1㎏増えると、膝への負荷は3~4倍増えるとされているので、体重のコントロールが膝の痛みや変形を予防するのには大切なことがわかります。
適正体重は身長(m)×身長(m)×22で計算をします。現在の体重が大幅に超えるようであれば、食事の見直しと運動で減量をしましょう。適正体重をキープすることで、膝や腰への負担が軽減され、痛みの解消につながります。
週2日以上の筋トレで筋肉を強化
正しい姿勢を保つためにも筋力は不可欠です。体を支える体幹が弱いと、背中が丸まった前傾姿勢になりがちです。また、適正体重を維持するためにも運動は必須。
週2日以上の筋力トレーニングと有酸素運動やバランス運動を組み合わせることで、立ったり歩いたりするときにふらつかず、安定した姿勢を保つことができるようになります。特に高齢者は、足腰が弱り転倒しやすくなっているので、積極的に体を動かして筋力が衰えないようにしてください。
一般的な成人では1日に約8,000歩の歩行と、週2日以上の筋トレが推奨されています。さらに、息が弾み、汗をかく程度の運動を週に60分以上行うことが望ましいとされています。
65歳以上の高齢者は1日に約6,000歩の歩行と週2日以上の筋トレを行うこと。さらに週3日以上、バランス運動や柔軟性の向上を目指すためのストレッチ、ラジオ体操を行うとよいとWHO(世界保健機構)の運動ガイドラインでも示されています。
膝の痛みを治すストレッチ
今すぐにでも膝の痛みを楽にしたいけれど、ストレッチ自体が膝が痛くて困るなんて時には、寝ながらできるストレッチであれば膝への負担も減らすことができます。
また、膝に関しては、自転車こぎのバイク運動も効果的です。膝への負荷は、体重の1.2倍とされ、歩行時の2~3倍に比べると約半分。そのため、膝に負担をかけずに筋力をつけることができます。
水深が胸くらいのプールでの歩行も膝への負担が70%軽減でき、最小限の負担で体を鍛えることができるので、膝に問題を抱えている人におすすめです。
50代からの筋トレは事前に健康チェックをしておこう
今まで運動習慣がなく、50代、60代になってから筋トレを始める人は、まず自分の健康状態を知ることが先決です。持病を抱えたまま運動をすると大きな病気につながるリスクがあるからです。
たとえば、高血圧の人が急に激しい運動をすると心臓に負担がかかり、急性心不全になる恐れもあります。加齢で筋肉の柔軟性が低下しているところに、急にランニングを始めたらアキレス腱断裂や肉離れなどの筋肉損傷が起こることも。膝関節に炎症があるかもしれません。その場合、膝を深く曲げる運動をすると症状が悪化し、痛みから運動をやめてしまうこともあり得るのです。
内科的健康診断だけでなく、整形外科的診断も受けておくといいでしょう。
正しい方法で少しずつ運動量を増やしていくこと
高齢者だけでなく、運動不足で20代でも腰や膝が痛いという方もいらっしゃいます。一般成人は1日約8,000歩、高齢者は1日約6,000歩のウォーキングが推奨されていますが、いきなりこの歩数を歩くのは大変です。まずは2,000歩、慣れてきたら3,000歩というように徐々に歩数を増やしていくことが、腰や膝を痛めず、無理なく続けられるコツです。無理をして膝に痛みが生じ、もう運動はしたくないとなるのは避けたいところ。また、強い痛みがあると歩くのが億劫になり、外出する機会が減ってさらに筋力が低下していく負のスパイラルに陥ります。頑張りすぎは禁物です。
運動後はアイシングやストレッチをして筋肉のケアも忘れずに行いましょう。脱水状態にならないよう、運動中は水分をこまめにとるようにしてください。
手軽に通えるジムが増えていますが、器具の使い方がわからないまま自己流でトレーニングをすると、かえって腰や膝を痛めることになります。運動初心者は、指導者のもと正しいフォームでトレーニングを始めてください。健康チェックを受けた病院で適切なアドバイスを受けるのも手。専門家のサポートを受けながら筋力をつけ、膝痛、腰痛を予防しましょう。
<記事更新:2024年10月21日>