整形外科を担当する松﨑時夫医師が、膝関節と再生医療について解説する連載がスタート。
第1回は、膝や腰に痛みがあった場合、いつ、どの病院へ行けばいいのかという素朴な疑問についてお答えします。
膝の痛みや違和感が1週間続くなら病院を受診
転倒して膝をぶつけたり、歩いているときに足をひねったり、ぎっくり腰になったりと、原因がわかっている痛みがある場合は、すぐに病院へ行く人が多いのではないでしょうか。
しかし、立ち上がる時に膝に違和感がある、階段の上り下りがつらい、ずっと同じ姿勢でいると腰が痛いといった“なんとなく”の痛みは、しばらくすると痛みが薄れて「治った」と思い放置しがちです。
膝の痛み、50代からは特に注意が必要
変形性膝関節症は、どんな人に多いのでしょうか。特に、50代、60代になると「もう年だから、膝や腰に痛みがあって当たり前」と、市販の湿布薬を貼ったり、自己流のマッサージをしたりしてやり過ごしている人も多いようです。
加齢が原因であったとしても、違和感や痛みは体からのSOSサインです。変形性膝関節症は、自力で治すことができる症状ではありません。自分では些細なことだと思っても、病気が隠れていることがあります。早期発見するためにも、違和感や痛みが1週間以上続くようなら、受診するようにしましょう。
膝関節に損傷があるかも!? 違和感チェック
痛みを感じるものの、生活に支障をきたすレベルではない。時間が経つと一時的に痛みが薄れている。すると、病院に行こうと思っていたのに、「今度にしよう」と先延ばしになりがちです。前述の通り、早めの受診が病気の早期発見になり、重症化を防ぐことになります。以下に該当することがあれば、迷うことなく医療機関を受診してください。50代だけに限らず、20代でも立ち仕事が多い方や、運動不足の方が、急に膝が痛いなどの症状は注意が必要です。
□朝、布団から起き上がるときに膝に違和感や痛みがある
□小さな段差でつまずきやすくなった
□正座をするのがつらい
□歩き始めるときに痛みがある
□椅子から立ち上がる時に膝がポキポキ、ギシギシ鳴る
□階段の上り下りで痛みが生じる
□過去に膝のケガをしたことがある
膝の痛みの主な原因は変形性膝関節症
チェック項目に一つでも該当した方は、膝関節に何らかの炎症が起きている可能性が高いでしょう。例えば、膝がポキポキ、ギシギシ鳴る方は、半月板の損傷や軟骨の一部の損傷が疑われます。また、過去にケガをしたことがあるなら、靭帯の損傷があった可能性があります。正座がつらいのは、膝関節内の骨に出っ張りがあったり、半月板の損傷が考えられます。
半月板と靭帯の損傷が起こると、関節の軟骨に負担がかかって徐々にすり減っていきます。すると、膝関節が変形する「変形性膝関節症」になり、歩くのもつらいほど強い痛みを感じるように。加齢により骨がもろくなるのも原因の一つです。
腰痛には見逃してはいけないレッドフラッグサインがある
国民病ともいわれている腰痛。その8割は原因を特定するのが難しいと言われています。原因が特定できる代表的な疾患は、腰椎分離症や腰椎椎間板ヘルニアです。高齢者が急激に腰が痛いと訴えた場合、転移性腫瘍の可能性が考えられます。
重篤な病気が隠れているのを見極めるために「レッドフラッグサイン」というガイドラインが定められています。以下の項目に一つでも該当するものがあれば、「いつもの腰痛」と放置せずに、受診することを強くおすすめします。
腰痛に関しても日常からのケアが必要です。
□発症年齢20歳未満、または50歳以上
□時間や活動性に関係ない腰痛がある
□胸部痛もある
□がん、ステロイド治療、HIVの感染の既往歴がある
□栄養不良
□最近、体重が減少している
□広範囲に及ぶ神経症状がある
□構築性脊柱変形(円背などの変形が強い)
□発熱がある
痛みの原因を探るには画像診断ができる整形外科へ
上記のチェック項目に該当する方は、自覚症状や見た目だけではわからない骨の炎症や、腫瘍が隠れていることがあるので、レントゲンやMRIなどの画像診断が行える整形外科を受診してください。場合によっては血液検査も必要になることがあります。
膝や腰の痛みとひと言で言っても、さまざまな原因が隠れています。さまざまな検査を行い総合的に診断できるのは整形外科です。症状によって投薬や手術、リハビリテーションなど適切な治療が保険適用で受けられます。
痛みを放置せず早めの受診で早期発見、早期治療を
年をとれば不調があって当然ではありません。病院に行こうと思っているうちに症状が消えたと安心せずに、繰り返し痛みが起こる、違和感が長引く(1~2週間が目安)ときは、迷わず受診をしてください。医師の診断で何もなければ安心できますし、病気があっても早期発見ができ、症状が進行する前に治療を受けることができます。早く治療を開始することで症状の悪化を食い止められ、治療効果も十分に期待できます。
<記事更新:2024年9月6日>