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再生医療

2024/03/05
【膝関節と再生医療 Vol.3】激しい運動をしていなくても中高年になるとリスクが高まる半月板損傷
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40代、50代になればなんとなく膝が痛い日が増えてくるもの。しかし、Vol.1でお話ししたように、「年だから膝が痛いのは仕方がない」ではなく、痛みの原因を取り除き日常生活の質を高めることが、健康寿命を延ばすために必要です。
今回は膝痛の原因のひとつである、半月板損傷について松﨑医師が解説します。
 

膝関節の仕組み

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半月板損傷についてお話しする前に、膝関節の構造を簡単に説明しましょう。
膝関節はざっくり分けると、骨、軟骨、靭帯、筋肉、腱で構成されています。骨は、大腿骨(太ももの骨)と、脛骨(すねの骨)、腓骨(すねの細い骨)、そしてよく膝の皿と呼ぶ膝蓋骨です。
骨と骨を繋げているのが靭帯です。大腿骨と脛骨は前十字・後十字靭帯で繋がっています。骨と骨の接地面には、骨が擦れ合わないように弾力があり、ツルツルしている関節軟骨があります。この軟骨は硝子軟骨と呼ばれ、60~80%が水で構成され、血管がなく、痛みを感じる神経線維がないのが特徴です。半月板はそのすき間にある三日月状をしている組織で、内側と外側に一つずつあります。
関節軟骨の周囲は滑膜という薄い膜があり、関節液がつくられています。この関節液が軟骨同士がツルツル滑るように潤滑油の役割を担い、さらに関節内に酸素や栄養を送る働きをしています。
関節全体を覆うのが関節包。そのまわりに筋肉や靭帯、滑液包が存在します。
 
 

膝関節にかかる荷重、衝撃を分散してくれるのが半月板

スポーツ選手がケガをしたというニュースで耳にする「半月板損傷」。この半月板がどんな役割をしているか知っていますか?
半月板は前述のように膝関節の中にある三日月状の線維軟骨です。関節軟骨は硝子軟骨といって、Ⅱ型コラーゲンやヒアルロン酸などで構成されていて表面がツルツルしていますが、半月板はコラーゲン線維で構成された弾力のある線維軟骨。大腿骨と脛骨の間にあり、クッションの役割や、関節が動くときにグラグラしないように安定させる働きがあります。
膝がスムーズに動くのは、水分が多くツルツルした関節軟骨のおかげです。半月板は、骨と関節軟骨に荷重負担や衝撃がかからないように、緩衝材の役割を担っています。屈伸をするときに前後に動き、特に深く曲げると大きく移動します。
 
 

半月板損傷のおもな原因は2つ

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半月板に亀裂が入ったり、欠損したりするのが半月板損傷です。
サッカーやバスケットボールなどハードなスポーツでは、半月板に大きな負担がかかりブチッと断裂するリスクが高くなります。しかし、特にスポーツ経験がなくても40代以降になると膝痛を抱える人が増えます。
半月板損傷の原因についてお話ししましょう。
 
 

スポーツや事故によるケガ

半月板は膝関節にかかる衝撃をやわらげてくれる役割を担っています。高いジャンプをして着地する、スピーディに方向転換する、体がぶつかり合うなど激しいスポーツでは、半月板に大きな衝撃が加わります。特に深く膝を曲げ、勢いよく立ち上がるときにひねる動作が加わるとブチッと切れてしまうことがよくあります。特にサッカー選手などの半月板は、ボロボロ状態なことが多いのです。
また、歩行時など転倒して膝をケガした場合にも半月板に亀裂が入ることがあります。
 
 

加齢による半月板の変形や逸脱

運動習慣がある、ケガをしたことがある人でなくても、加齢に伴い半月板の弾力がなくなり、少しの衝撃でも損傷するリスクが高まります。
40代、50代にもなると肌の水分量が減り、潤いが失われていくのと同じように、膝関節の軟骨や半月板も水分がなくなりもろくなっています。
膝関節には歩行時で体重の2~3倍、階段の上り下りでは6~7倍もかかっているといわれています。普通に生活しているだけで負荷がかかり、日々ダメージを受けているのです。加齢によって変形した半月板は、動くたびにこすれて摩耗していきます。ある日、しゃがんで立ち上がろうとしたとき、ブチッと切れてしまう、なんてことが起きるのです。
加齢による組織の機能低下に加え、慢性的な負担によって中高年になると傷つきやすいというわけです。また、大腿骨の形状なども加齢と共に変形していき、半月板に余計に荷重ストレスが加わることで、半月板が通常の位置から逸脱といって、はみ出ていく事も知られています。これによりさらにストレスが加わり断裂を来すこともあります。
 
 
 

「膝に引っかかりを感じたら」半月板損傷を疑って

ケガをした場合は、外傷や痛みがあるため病院を受診すると思いますが、中高年になり「なんとなく膝が痛い」くらいでは、そのまま放置することはよくあることです。
安静にしていると痛みがない、ときどき痛む程度でも整形外科を受診することをおすすめします。半月板の特に外側部分には血管があまりないので、一度損傷すると自然に治ることは望めない可能性があります。放置すると症状が悪化し、歩行困難になることもあるので早めの治療が大切です。
 
 

半月板損傷の症状があったらすぐに受診を!

「これくらいで病院に行くのは……」とためらう方もいらっしゃいますが、違和感があれば、迷わず受診してください。
特に次のような症状があれば、膝関節に何かしらの損傷があると思っていいでしょう。
 
□膝を動かすと音がなる
□屈伸するときに引っかかりがある
□膝が曲げづらい
□膝のまわりが腫れている
□階段を下りるときに膝がガクンとする
 
 

問診と画像検査で診断

どんなときに痛みが出るのか、痛みの程度などを患者様から聞き出し、触診や半月板を刺激するような徒手テストを行います。半月板損傷が疑われる場合、画像検査を行います。半月板はレントゲン画像には写らないため、MRI検査でどのような状態かを確かめます。
 
 

半月板損傷の早く治すための治療法

半月板損傷の治療には、保存療法と手術療法があります。近年は再生医療も選択肢に加わりましたが、そのお話しは改めていたしましょう。
 
 

痛みや炎症を軽減する保存療法

初期の段階や損傷が軽度の場合は、飲み薬や湿布で炎症を抑えて痛みを軽減する保存療法を行います。
潤滑油の役割を果たすヒアルロン酸を関節内に注入することで骨同士の摩擦を防ぎ、痛みを軽減することができます。前回のテーマである膝痛を軽減するための体重管理と適度な運動も保存療法のひとつです。理学療法士のもと、リハビリを行い、症状の悪化を防ぎます。膝に負荷がかからないよう体重を増やさないことも大切です。
これらの保存療法はつらい症状を緩和する「対症療法」なので、半月板の亀裂が修復できたわけではありません。一時的に痛みを軽減しただけなので、再発、悪化する場合もあります。
 
 

半月板の損傷の程度に合わせて手術-リハビリ

保存療法で症状が改善されない場合、手術を検討します。
断裂した半月板を取り除く「半月板切除術」と、損傷した部位を縫い合わせる「半月板縫合術」の主に2つの方法があります。
半月板がなくても大丈夫なの?と思われるかもしれません。実は、なくても膝関節は動かすことができます。関節軟骨があるので、骨同士の摩擦も防ぐことはできます。しかし、衝撃を吸収するクッションがなくなるので、関節軟骨への負担が大きくなり、早い段階で変形性膝関節症につながるリスクはあります。また、傷ついた半月板を縫い合わせても、再び断裂するおそれも。
手術療法は痛みや炎症がすぐに軽減できるメリットはありますが、パーフェクトな治療法ではないということです。さらに、手術の場合は入院が必要ですし、半月板縫合の場合にはその後のリハビリにも時間がかかり、普通の生活に戻るまで2~3カ月はかかるでしょう。高齢になれば体への負担も大きくなるでしょう。
 
特に40代以降は「ただの膝痛」と軽く考えず、膝に違和感を覚えたら専門医を受診するのが、健康な膝を守るために有効な手段です。放置しておくと、半月板損傷から変形性膝関節症へと症状がどんどん悪化してしまいます。
 

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