今回は、加齢による見た目の変化に対する幹細胞治療についてご紹介します。美容医療も格段に進化していますが、幹細胞治療もひとつの選択肢として考えてみるのもいいのではないでしょうか。
幹細胞治療は局所注射か点滴治療に分けられる
当クリニックでは、骨髄由来の幹細胞と脂肪由来の幹細胞を用いて、さまざまな疾患に対応しています。どちらも患者様から採取した幹細胞を培養して治療するというのは同じですが、疾患に合わせて注射で患部に直接投与する方法と、静脈から点滴で投与する方法に分かれます。
まずは、注射による幹細胞治療の例をご紹介します。
加齢が原因で毛髪が減る脱毛症
年を重ねれば、体のさまざまな機能が衰えていくのは自然なこと。髪が生まれ変わるサイクルも変化していきます。髪を作る毛包幹細胞の数が減り、新しく生えてくる髪は細くなりハリ・コシがなくなり、やがて毛髪の本数が減ってボリュームがなくなっていきます。
加齢性の薄毛・脱毛は、見た目にも大きな影響を与えますし、生活の質を落としてしまうこともあります。そのため、脱毛症に対してさまざまな治療法が開発されています。
頭皮専用の注射針で幹細胞を注入
治療に用いるのは脂肪幹細胞です。ほかの治療と同じようにおへその比較を3~4㎜程度切開し、脂肪を採取します。その後、幹細胞を分離、培養して加齢性の変化が見られる個所に注射をします。
脱毛症治療では、頭皮のすぐ下の浅い層に幹細胞を入れなければならないため、一般の注射器ではなかなかうまくできません。そのため、針が3本ついている特殊な注射針を使用します。患部に麻酔注射をするので、痛みはほとんどありません。
治療による満足度、効果は個人差がある
治療による効果を確認するために、写真を撮ります。当クリニックで行った脱毛症の治療では、ほとんどのケースで効果が確認されています。
客観的に見て効果が表れていても、患者様に満足していただけないこともあります。逆に少しの変化でも「気になっていた個所にすごく生えて満足です」と喜んでくださる患者様もいます。
増毛や美容治療の効果については、基準がありません。その程度改善したら脱毛症治療があったとみなすか、どこまでの改善を求めているかは、患者様によって個人差が非常に大きいのです。これは、私たち医師にとって壁となっているのが現状です。
ちなみに、外傷性の脱毛症や何らかの疾患による毛髪減少に対して、幹細胞治療は効果が期待できないこともあります。
しわやたるみ、シミなど皮膚の加齢性変化
肌にハリがなくなってきた、しわやたるみが気になる、シミが増えてきたといったエイジングサインは、前述の脱毛症と同じで病気とは言えません。肌の変化に対する感じ方や、どこまで修復したいのかは、一人一人異なります。
しかし、肌トラブルも見た目を左右し、生活の質を落としかねないものです。
当クリニックでは、レーザー治療などほかの方法では改善できなかったという患者様の治療を脂肪由来の幹細胞で行い、多くの症例で一定の効果を確認できています。
顔や首に皮膚専用の注射器で投与
患者様のおへその付近から採取し、培養した脂肪幹細胞を使用するのは頭髪と同じです。しわやシミなど改善したい個所に注入します。
皮膚専用の注射器で、皮膚自体を吸引し密着させながら注射。クリーム状の麻酔を患部に塗ってから行いますので、痛みは最小限に抑えられます。
投与後はまれに腫れることがありますが、それほど大きな腫れにはならないので安心してください。
肌全体にハリが出て若返りが期待できる
脂肪幹細胞の投与によってコラーゲンが増加し、肌にハリが出て、ツヤやうるおいを感じるように。肌のトーンが明るくなる効果も期待できます。全体的に若返ったようになるでしょう。また、マウス実験では、シミやしわの予防効果も明らかになっています。
当クリニックでは特殊なデジタルカメラを導入し、治療前と後で写真を撮り、比べられるようにしています。しかし、明確な診断基準がないため、効果の感じ方は人それぞれになってしまうのが現状です。
美容目的で再生医療を行う人も増えてきています。自分の脂肪由来の幹細胞を用いるため、アレルギーや拒否反応を起こす心配もなく、気になる個所を集中的に治療できるのがメリットです。