アヴェニューセルクリニックでは最先端の再生医療、足のむくみの日帰り治療を受けることができます

医師ブログ

TOP  >  医師ブログ  >   再生医療   >  【培養幹細胞治療の学び】脂肪幹細胞を用いた変形性膝関節症の治療の流れ ~後編~

再生医療

2023/10/23
【培養幹細胞治療の学び】脂肪幹細胞を用いた変形性膝関節症の治療の流れ ~後編~
前回は、当クリニックで行っている変形性膝関節症の脂肪幹細胞治療の流れとして、問診から治療日の決定まで説明しました。後編では、治療から術後の生活、再発を防ぐための生活習慣について解説します。
 
 
231002_1.jpgのサムネイル画像

幹細胞を投与する当日の流れ

注射で膝に注入された幹細胞は、平均して10〜15分程度で生着し、軟骨や半月板にくっついて炎症を抑える働きを開始し、同時に傷を修復し始めます。治療の当日は幹細胞の働きを助けるため、投与後15分間は院内で安静にしてもらいます。その間に膝の内部ではすでに回復に向けた変化が着々と進んでいるのです。
では、治療当日の流れをみていきましょう。
 

注射で幹細胞を投与(治療)

治療の当日は、膝関節の深い位置まで届く長針の注射器を使って幹細胞を膝に注入します。その前に局所麻酔を行うので、注射の痛みはほとんどありません。
注入する量は片膝につき2.5ccから、多くても5cc程度です。このわずかな注射液のなかには、5000万~1億個にも及ぶ患者様の自家幹細胞が詰まっています。注入の仕方は、症状によって変えていて、膝の全体が痛む場合、椅子に腰かけてもらった姿勢で注射をします。膝の内側が痛む場合は、内側を下にした姿勢で寝台に横になってもらい、その姿勢のままで注射を打ちます。
 
注射は痛みを発する患部をめがけて打ちますが、投与した細胞は重力に従って降りてくるので、降りた地点に患部がくるような姿勢をとってもらうようにしているのです。
 

治療当日のリハビリテーション

外科治療を終えたあとのリハビリテーションは、とても大切です。幹細胞治療においても同じ。当クリニックでは、治療を行う当日をリハビリテーションの開始日にしています。治療が済んでから15分程度の安静後、軽い運動を1時間ほどしてもらいます。
膝を支える筋力をつけるための運動で、全部で5種類。この運動は幹細胞治療後の患者様だけでなく、膝にトラブルを抱えている多くの方にも痛みを軽減し、筋肉量を増やす効果があります。
 

運動1:膝の曲げ伸ばし運動

仰向けになって片膝ずつ曲げて伸ばすをくり返す。左右50回行う。関節の修復力を高める効果が期待できる。
 

運動2:つま先立ち運動

足を肩幅に開いて立ち、軽くかかとを持ち上げて5秒たったらおろす。5回くり返す。ふくらはぎの筋肉を増やすことによって膝への負担を減らし、安定性を高める運動。
 

運動3:足持ち上げ運動

椅子に深く腰掛け、片方の足をまっすぐ伸ばす。膝をしっかりと伸ばしきるのがポイント。5秒キープしたらゆっくり下ろすことを5回くり返す。反対の足も同様に行う。太ももの前側にある筋肉を鍛えることによって膝への負担を軽減。
 

運動4:足引き上げ運動

椅子に深く腰掛け、両手を座面の両サイドに置く。片足を軽く浮かせ、かかとで椅子の脚を後ろに押す。5秒たったらゆっくり下ろすことを5回ほどくり返す。反対の足も同様に行う。太ももの裏側の筋肉を強化する運動。
 

運動5:ブラブラ運動

椅子に腰かけ、片足の太ももの下に両手を入れて軽く持ち上げる。振り子のように足を前後にブラブラさせる。反対の足も同様に行う。関節のすき間を広げる効果が期待できる。
患部が多少痛むかもしれませんが、膝を稼働させることによって力学的な刺激を受けた幹細胞は、多くのたんぱく質を出すので回復が促されます。
 
 
 

術後は再発を防ぐためにも適度な運動を続けること

231002_2.jpg
幹細胞を投与後、数十分もすれば損傷の修復が始まります。膝を修復するのは、患者様自身の幹細胞で、言わば自分の力で治していくわけです。
数日は痛みを感じるかもしれませんが、リハビリテーションや運動をすることが大切です。
 

術後は痛みがあっても軽い運動をする

治療日から3~4日は注射の痛みも含めて膝に痛みを感じることがあるかもしれません。これは治療直後だけで、鎮痛剤や抗生物質の内服でおさまるケースがほとんどです。
膝が痛いとリハビリテーションや運動を休んでしまう方もいますが、刺激を与えることで回復が早くなりますし、筋力がつくことで膝への負担が軽減されますので、ぜひ続けてください。
 

術後1カ月検診で状態を確かめる

膝の状態を確かめるために、1カ月後に検診をします。この段階では、軟骨や半月板の修復が始まっていてもMRI画像で確かめられるほどの変化がないため、画像診断ではなく痛みのスケールによる診断を行います。痛みが完全に消えていない患者様も、痛みのスケールで測定すると、10段階評価で10だった痛みが7〜6まで下がっているケースが大半です。
1カ月検診で特に問題がない場合は、3カ月、半年と間隔をあけて検診をし、「治療前より楽になり、軽い運動ができるようになった」「痛みがほとんど消えた」という状態になったところで治療は終了します。
 

運動習慣を身につけ、筋力を維持する

痛みが消え、膝の状態がよくなっても、以前と同じような生活をしてしまうと膝関節が損傷することもあり得ます。変形性膝関節症は生活習慣に起因するケースが多いからです。適度な運動をして筋力をつけ、体重の増加を防ぎましょう。体重が増えると膝に負担がかかりますので、食生活の見直しも大切です。術後のリハビリテーションで行った運動を続け、毎日の習慣にしてください。運動で汗をかき、栄養のあるものを食べ、生活全般を活性化させてプラスのスパイラルを生み出しましょう。
 
幹細胞治療は、軟骨や半月板を取り除く手術とは異なり、繰り返し行うことも可能です。しかし、せっかく治療して改善した膝関節ですから、いい状態を維持して健康寿命を延ばしてほしいですね。

 

再生医療の最新記事

2023/11/03
東京大学整形外科の齋藤琢医師との対談 ~膝関節症に対して効果を発揮するそのメカニズム~
2023/10/23
【培養幹細胞治療の学び】脂肪幹細胞を用いた変形性膝関節症の治療の流れ ~後編~
2023/10/14
東京大学整形外科の齋藤琢医師との対談 ~TOPs細胞®を育てる不織布について~
2023/10/02
【培養幹細胞治療の学び】脂肪幹細胞を用いた変形性膝関節症の治療の流れ ~前編~
2023/09/28
東京大学整形外科の齋藤琢医師との対談 ~TOPs細胞®に欠かせない培地について~
2023/09/18
【培養幹細胞治療の学び】変形性膝関節症に対する多岐にわたる治療法と再生医療
2023/09/04
【培養幹細胞治療の学び】幹細胞治療の修復メカニズムと、再生医療が役立つ変形性膝関節症
2023/08/31
幹細胞治療に関してよくあるご質問
2023/08/28
【培養幹細胞治療の学び】よりよい再生医療を実現するために大学、企業と共同開発を推進
2023/08/21
【培養幹細胞治療の学び】細胞培養は患者そのものとして、全てに責任を持つことが大切
2023/08/07
【培養幹細胞治療の学び】新法により研究開発から実用化までスピーディになった再生医療
2023/07/31
間葉系幹細胞のフレイルに対する臨床について
2023/07/31
【培養幹細胞治療の学び】再生医療の安全性を確保するために法律を制定
2023/07/24
【培養幹細胞治療の学び】再生医療の発展を妨げる、社会に衝撃を与えた不正事件を振り返る
2023/07/18
【培養幹細胞治療の学び】医療現場で期待される再生医療における万能細胞と治療薬
2023/07/10
【培養幹細胞治療の学び】培養皮膚を用いた火傷治療からスタートした再生医療のあゆみとは
2023/07/03
【培養幹細胞治療の学び】再生医療の要である幹細胞とは何か。その特徴と役割を解説
2023/06/30
寺尾先生と幹細胞の点滴について対談・後半~身体的フレイルに対する幹細胞治療とプレフレイルについて
2023/06/06
寺尾先生と幹細胞の点滴について対談・前半~脊髄損傷と腰痛や座骨神経痛などの慢性疼痛への幹細胞治療について
2023/05/12
松﨑先生と膝関節の再生医療と肌の再生医療についての対談・後半