明日、2017年日本眼瞼義眼床手術学会にて講演いたしますので、その要旨をupします。
2017年日本眼瞼義眼床手術学会
ランチョンセミナー
共催:日立アプライアンス株式会社
抄録
クリニックでおこなう細胞治療の現状 ~再生医療新法への対応~
井上啓太
アヴェニューセルクリニック
平成26年以降、日本国内で行われるすべての再生医療に対して「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(いわゆる再生医療新法)が適用されることになった。再生医療はリスクに応じて第1種から第3種までの3つに分類され、すべての再生医療の実施計画は、それが研究であっても治療であっても、認定再生医療員会(第1,2種については特定認定再生医療員会)においてその安全性と妥当性が審査され、承認されたもののみが厚生労働省に届出・受理されるルールとなった。これまで美容医療を中心に行われてきた幹細胞の比率を増した脂肪注入なども、医師の裁量だけで行うことは不可能となった。また、細胞加工施設についても法の下に定義され、一定以上の水準で細胞加工を行うことを要求されることになった。
新法施行の効果には、再生医療に対する「規制強化」と「規制緩和」の二つの側面があり、再生医療委員会による審査の義務化は間違いなく「規制強化」である。一方注目すべき現象として、「培養幹細胞による治療」が第2種再生医療として認められるようになったことは、ある意味「規制緩和」である。細胞治療で用いる細胞はminimal manipulation、すなわち非培養であることが世界の趨勢であるのに比して、日本は非常に先進的な状況に置かれることになった。
アヴェニューセルクリニックでは、再生医療新法に対応して4つの第2種再生医療(皮膚老化、脱毛、関節障害、脳梗塞)の治療計画を特定認定再生医療等委員会に提出し、安全性・妥当性を持つものとして厚生労働省に受理された。本治療では、院内手術室で米粒大の脂肪を採取し、附設するCPC(cell processing center)において幹細胞を培養して治療に用いる。幹細胞の採取、培養、投与などあらゆる局面で、適切なベリフィケーション、リスクマネージメント、クオリティーコントロールを要求されるため、提供サイドには基礎研究・臨床試験・薬事に関する深い知識と経験が必要である。当院における現況を報告するとともに、クリニックレベルで再生医療を行うために満たすべき要件について考察する。