肌の再生医療といえば、以前の
ブログでも紹介しましたが、もっとも歴史が古いのは培養表皮です。培養表皮は肌の表面に張り付いている表皮細胞を培養したもので、重傷熱傷の救命処置の治療に革新をもたらしました。
一方で表皮の深層には「真皮」や「皮下脂肪層」があります。「真皮」の主成分はコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどのマトリックスと呼ばれるタンパク質であり、これらは真皮内に存在する線維芽細胞によって日々産生されています。「皮下脂肪層」は文字通り脂肪が主体で、脂肪由来幹細胞が維持していると考えられます。線維芽細胞は加齢とともに減少し、マトリックスを産生する能力も次第に衰えてゆきます。また皮下脂肪の量は皮膚の弾力性に大きな影響を与えます。「しわ」や「たるみ」は真皮マトリックスの加齢による減少、皮下脂肪の萎縮が目に見えるようになったものです。
近年になって肌の再生医療の目的で、マトリックス(コラーゲン・ヒアルロン酸)そのものをフィラーとして注入したり、PRPをサイトカイン補充のために注入したり、線維芽細胞や脂肪由来幹細胞を培養して注入したりする治療が行われるようになってきました。コラーゲンは1980年代に注入剤としてFDA承認となり、美容用ヒアルロン酸製剤の注入は1996年にEUで承認されました。培養線維芽細胞による臨床応用は2000年ごろから行われ、最初の第3相試験(効果と安全性を確かめる厳密な臨床試験)は2007年に行われ、安全性と有効性が確認されています。
脂肪由来幹細胞の注入による肌再生医療(真皮の再生医療)については、長らく大きな期待がもたれてきました。臨床応用はほかの治療より少しだけ歴史が新しく、最初の報告は2008年頃になされています。その後、世界中の医療研究機関で散発的に臨床試験が実施されてきました.2015年には比較的多数の患者を対象とした臨床試験が行われ、エラスチン前駆体の増加による優れたアンチエイジング効果が証明されました。再生医療等安全確保法が施行された日本では、世界に先駆けて脂肪由来幹細胞による肌の再生医療を安全に受けることができます。アヴェニューセルクリニックでも
皮膚に対する培養脂肪由来幹細胞注射(第2種再生医療)の提供計画を承認されていますので、希望される方はご相談ください。