「膝の痛みを何とかしたい。でも手術はしたくない。」
変形性膝関節症の患者さんは、その予備軍も含めると2000万人とも3000万人とも言われています。進行した症例に対する標準治療は人工関節置換術ですが、簡単な手術ではありません。
アヴェニューセルクリニックでは、手術を希望しない変形性膝関節症の患者さんを対象に、低侵襲(からだに負担が少ない)細胞治療を行っています。臍の横などから米粒大の脂肪を採取し、培養して増やしてから膝関節に注射します。多くの方は1~2週間で痛みが軽減します。最初の痛みを10分の9としたら、治療後は10分の3程度になります。
「脂肪幹細胞を膝に注射してどうして痛みがよくなるんでしょう?」
脂肪幹細胞は多能性幹細胞といって、さまざまな種類の細胞に変化する能力があります。たとえば関節軟骨や血管になることもできます。また、移植した先の炎症を鎮める作用もあります。変形性膝関節症の場合は、軟骨や関節包に炎症や変形があるため動かすことで痛みが発生します。痛みのために動かさなくなるので、さらに変形が進行します。脂肪幹細胞を注射することで炎症が静まり関節を動かしやすくなり、軟骨が楽に滑走します。その動きで軟骨の修復が促されます。
写真の患者さんは61歳女性、職業は社交ダンス教師です。数年前から両膝の痛みが生じ、社交ダンス中に生徒を支えて踊ることが困難になってきました。また、正座をすることができず、写真のように横座りのような形でしか座ることができませんでした。MRIをとってみると、半月板に亀裂がはいっており、膝のお皿の軟骨も痛んでいることが分かります。人工関節にするほどではありませんが、ヒアルロン酸製剤の注射の適応にはなります。しかし、それでは治癒しませんので、培養脂肪幹細胞の関節内注射を行いました。
術後1日程度は鈍い痛みがありましたが、1週間以内にスクワットが可能になり、写真のように正座もできるようになりました。この患者さんも治療前の痛みが10分の9だったのに対して治療後に10分の2程度まで軽快しました。
このような治療は数年前までは考えられませんでしたが、今では厚生労働省の承認のもと安全に実施することができるようになりました。再生医療は私たちにとってより一層身近な存在となりつつあります。