「古きを温(たず)ねて新しきを知る、以て師となるべし。」 論語 為政
再生医療の歴史をたずねてみましょう。過去を見ることで、未来も見えるようになるはず。
再生医療(regenerative medicine)という言葉は、1992年 Leland Kaiserによって使われた、とされています。インパクトの大きい未来の技術についてさまざまあげられた中の一つとして登場しています。では何が新しかったのか。
従来の治療では、体の再生は困難です。悪いものは取る。悪化したものを修復する。たとえば腸に問題があってその多くを切除した場合、残った腸が短いために起こる短腸症候群は、基本的に治らない。生きるためとはいえ、一生にわたって患者さんは苦労を背負い続けることになります。再生医療は文字通り「再生」することで、失われた機能を再び得られるようになる、という点が画期的だったのです。
この再生医療を支える3つの要素として、細胞、足場素材、細胞を含めた足場素材があげられます。まるで失われた3次元臓器を再生するために、1次元の細胞、足場素材を使って2次元、3次元へと、一歩ずつ歩んできたようです。
この再生医療の原点は1968年に遡ります。最初の細胞移植である骨髄移植が行われるようになりました。その後、1978年に臍帯血から幹細胞が発見され、1981年 マウスでin vitro幹細胞株が樹立しました。その後1996年 クローン動物 羊のドリーが生まれたことも鮮烈なニュースとして話題を博したこと、記憶されている方も多いと思います。
さて、なかでも大きな発展を遂げてきた、細胞。体中の様々な種類の細胞のもとになる幹細胞を、もっと自由に、もっと安全に作ることはできないか。人類の挑戦は歴史に刻まれています。
特に胚性幹細胞(ES細胞)は受精卵にほどちかい状態からとってくる細胞で、倫理的な問題が付きまといます。それを成人の皮膚の細胞など、非常に採取しやすい部位からとってきて、さまざまな臓器になることができる素材細胞に変えたiPS細胞が報告され、その後もさまざまな臨床応用が進んでいます。
これらの作業には手間や費用も莫大にかかるのですが、もう少しなじみやすいものとして脂肪由来幹細胞も大きく貢献してきました。
いままさに再生医療はことばや研究室の壁を超えて、みなさんのもとに届いてきています。次はどんな医療の発展があるのでしょうか。
ではまた!
(加藤基)
参考資料