前回、ウイルスは生物ではありません!という話をしました。
さて、今回は細菌の話をしたいと思います。今の私たちにとって欠かすことのできない、大発見と微生物に命をかけた、ある男のストーリーです。
古代の大哲学者アリストテレスは(紀元前4世紀)、万物の観察の末、世界は生命の種であふれており、物質を使って生物は自然に発生すると唱えた。ミツバチやホタルは草の露から生まれる、と。(なんともロマンチックですね)以後、長年(約2000年!)にわたって、この生物自然発生説は常識とされてきました。
その後17世紀になって、一筋の疑義が唱えられます。フランシスコ・レディ。腐った魚を瓶の蓋を開けた状態と、密閉する蓋の代わりにガーゼで覆った状態。数日経つと、蓋のない瓶からはウジがわいた。彼自身は自然発生説を真っ向から否定しませんでしたが、比較対象(コントロール)を作って、反応の違いをみる、、という客観的な方法が画期的です。
そしてさらに200年近く時が経ち、19世紀。コッホによる炭疽菌の発見でも有名な、大いに細菌学が発展した時代。本日の主人公ルイ・パスツールの登場です。彼はコッホの発見に先立って、ワインの腐敗原因を調べるべく、研究を開始していました。白鳥の首フラスコで有名な実験(写真参照)を行なって、自然発生説は嘘だと結論づけ『自然発生説の検討』を1861年に発表します。
その後、今の私たちも恩恵を受けている、低温殺菌法を編み出します(1866年)。低温(100度以下)で加熱すると有害な菌の増殖を抑えられる、という方法で、牛乳パックなどに書いていることがあります。ぜひ見つけてみてください。これ、何がいいかっていうと、風味を保ったまま殺菌できるのが優れているんですね。他にもアルコール分を残すように、日本酒などにも使われ、彼の名前をとって低温殺菌法は英語で「パスチャライゼーション」と呼ばれます。今では技術がどんどん進んで低温殺菌では殺しきれない胞子菌をやっつけるために、今の主流は圧力をかけて行う超高温瞬間殺菌法のようですが、まさにその基礎を作った人なのです。
そのほか狂犬病ワクチンの開発を成功させたり、化学分野で実績を残したりと、多面的に活躍しました。その彼の有名な言葉に「科学に国境はないが、科学者には祖国がある。」
実はこの低温殺菌法、日本では500年も早く室町時代から「火入れ」と呼ばれて実践されてきました。トレビアーン、我が祖国 日本!
ではまた!
参考
アリストテレス wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%B9
白鳥の首フラスコ実験
啓林館 生物の起源と細胞の進化より引用
http://keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_2/contents/bi-2/3-bu/3-2-1.htm
一般社団法人 Jミルク
https://www.j-milk.jp/knowledge/products/hn0mvm0000005s3v.html