天高く、馬肥ゆる秋。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今回は、リンパ系疾患への新しい保険収載が決まった、ラパマイシンの発見に関するお話です。
1964年、カナダの微生物学者のチームがイースター島で天然の抗生物質を生成する土壌微生物を発見しました。Suren N. Sehgal博士は1972年にこの微生物(放線菌)の作る抗生剤を分離し、大量生産することに成功。イースター島の地元の名前であるRapa Nui(ラパ ヌイ)に敬意を評して、ラパマイシンと名付けました。なんとかマイシンというと抗生剤の名前ですね。クラリスロマイシンとか、クリンダマイシン、ストレプトマイシンとか。土壌の放線菌から有効な成分が発見されるというと、2015年にノーベル賞を受賞した大村智先生のエベルメクチンに似ていますね。
さて、ラパマイシンの有効性はさらに研究され、mTOR経路というのが関わっていることがわかります。まるで川の上流から下流まで下っていくと、他の支流が見つかるように、この経路ならこの用途にも使えそう、という感じでしょうか。免疫抑制剤として使用され、さらに癌治療薬、今回のようなリンパ管腫など適応が広がっています。
このラパマイシンはマウスの老化に対しても有効だったという報告があります。
ほんまかいな、とつい突っ込みたくなりますが、本当ならすごいこと。不老長寿の薬、意外と足下(と言ってもイースター島でしたが!)にあるものなのかもしれませんね。そういえばエベルメクチンは静岡のゴルフ場だったようですね。もしかしたら近くの公園の土から、何か見つかるかも。。
芋掘りのシーズンですが、ちょっとくらい芋に残った土も、そう思うと嫌にならないかもしれません。もっとも、どうやって放線菌を見つけるかは今後勉強したいと思います。
ではまた!
(加藤基)
参考資料(今回はフルで英語なので、読みにくいかもしれませんが、日本語での文献が少なかったのでご容赦ください。)
Sick Papes Suren N. Sehgal
https://sickpapes.tumblr.com/post/81588052513/sickpapes-special-on-suren-n-sehgal-1932-2003
Tribute of Surendra Nath Sehgal
http://www.sehgal.net/surenshistory.htm
Wikipedia ラパマイシン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%91%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%B3