新型コロナウイルスが流行しているため、熱がでると心配ですね。
リンパ浮腫 合併症「蜂窩織炎」
リンパ浮腫の合併症のひとつに「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という熱を伴う症状があります。蜂窩織炎になった方はわかると思いますが、最初はまるでインフルエンザのような症状となります。38度から、ときには40度以上の高熱がぱっとでて、寒気(悪寒)や関節痛、筋肉痛を伴います。そして、同じくらいのタイミングでリンパ浮腫のある手足に赤味や痛み、腫れが生じます。
蜂窩織炎の症状とは
これは、リンパ浮腫のあるほうの手足の皮膚・皮下脂肪に細菌が侵入し、それらが産生する毒素が血流にのって体中にまわり、それに対して体が免疫反応を起こして発熱や炎症を引き起こしている状態なのです。
蜂窩織炎は、インフルエンザと症状が似ていても、細菌感染を原因とした症状であって、ウィルスの全身感染によっておこるインフルエンザとは違うものです。
また、リンパ浮腫の患者さんにインフルエンザのような症状があっても、同時に手足にも症状がでて、熱もパッと消えますから、恐らくは蜂窩織炎であってインフルエンザではないということが分かります。
恐らく、、、?
蜂窩織炎とインフルエンザ合併の可能性も
恐らくといったのは、実は、単純な蜂窩織炎と思っていても、インフルエンザを合併していることがあるのです。リンパ浮腫の患者さんがのどの粘膜などからインフルエンザにかかると、当然、発熱、関節痛、筋肉痛が発生しますが、それと同時にリンパ浮腫のほうの手足が赤く腫れてくることがあります。(また、インフルエンザ以外の細菌性の上気道炎、扁桃炎が明確にあって、さらに発熱と同時にリンパ浮腫のほうの手足が赤く腫れてくるのを見かけることがあります。)
リンパ浮腫に起因する蜂窩織炎の発症原因とは
韓国のKosin UniversityのPark医師らの
調査によれば、1246人のリンパ浮腫患者のうち99人(7.95%)に蜂窩織炎の発症があり、ひとりで複数回発症があるので、これら99人の患者さんに合計188回の蜂窩織炎を認めたそうです。そのうち24回(12.77%)の原因はcommon cold(つまり風邪)またはwound(キズ)だったとのことです。
風邪から蜂窩織炎を発症する理由ははっきりとはわかりませんが、
1)リンパ浮腫の手足は病原体に対して免疫が弱くなっているため、ウィルスなどが流れ着いて手足で特に強い炎症をおこす
2)リンパ浮腫の手足はもともと炎症状態にあり、全身感染により強く免疫反応がひきおこされる
3)たまたま、風邪(鼻腔口腔咽頭粘膜のウィルス感染)と蜂窩織炎(皮膚の感染)に同時にかかった
などのメカニズムが考えられます。
リンパ浮腫に関連する「発熱」と「蜂窩織炎」の可能性
つまり、同じ「発熱+蜂窩織炎」でも、
A.
リンパ浮腫の手足に細菌感染
↓
蜂窩織炎
↓
細菌の毒素が全身にまわる
↓
全身の発熱
B.
インフルエンザウィルスなどの上気道感染
↓
全身の発熱
↓
リンパ浮腫の手足にも波及(?)
↓
蜂窩織炎
ということが可能性としてありえますので、よくわからないときは
こちらからご相談ください。
また、リンパ浮腫の患者さんが新型コロナウィルスにり患した場合の発熱については、蜂窩織炎を伴うことがあるのかどうかまだわかりませんので、情報を集めてゆきたいと思っています。
リンパ浮腫に伴う蜂窩織炎には、リンパ管静脈吻合術(LVA)が有効です。当院では日帰りで行うリンパ管静脈吻合術に特に力をいれています。詳細については
手術のページをご覧ください。
<記事更新:2023年10月31日>