
コロナ対策でマスク着用が当たり前になり、駅の階段を駆け上がったときなど、マスクしていると息苦しく感じることもあるのではないでしょうか。
医学的に息苦しさを感じる原因はいくつもありますが、リンパ管の病気で呼吸困難になるものもあるんです。その症状を乳び胸(にゅうびきょう)と言います。
リンパ管は一方向に流れる管になっていて、皮膚や腸管など様々な臓器からリンパ液を回収し、集まったあと首の静脈に返ります。もちろん肺や肺を包む膜(胸膜・横隔膜)にもリンパ管はあって、正常状態ではリンパ液が胸に溜まることはありません。
ところが生まれ持った原因などで中枢近くのリンパ管に通過障害をきたし肺の周りにリンパ液が逆流して漏れ出ることや、食道や心臓などの手術を受けた際にリンパ管が傷ついてしまうことなどで、肺の周りにリンパ液が溜まってしまうことがあります。この状態を乳び胸と呼びます。乳びとは胸を通るリンパ液のことで、言葉の通り白く濁った色をしています。消化管で吸収された脂質などが豊富に含まれているので、手や足で見られる透明なリンパ液と見た目も少し違うわけです。
この乳びが少ししか溜まっていないとピンピンしていられるのですが、量が多くなってくると肺が押されてしまう原因となり、息苦しくなってきます。治療としては様々な方法がありますが、近年はリンパ液の流れが詳しく分かるようになってきたので、リンパ管吻合術なども行われるようになってきました。そのほか放射線技術の発展に伴い、リンパ液が漏れ出る部分やそこに至るリンパ管を薬剤などで詰めてしまう、なんてこともできるようになってきており、今後さらに治療が進むことが期待される領域です。
さて呼吸の状態がどれほど悪いかを見るのに、唇の色が紫になる、ゼエゼエ言う、長く歩けない、など身体所見からも推測はできますが、これを酸素飽和度として具体的な数値で示してくれる機械があります。パルスオキシメーターです。コロナ関連の話題でニュースなどでも時々出るようになり、ご存知の方もおられるかもしれませんが、これ日本人の発明なんです!
採血をせずに酸素飽和度を測る取り組みは、かなり昔から行われていたようです。イヤーオキシメーターと呼ばれる機械は1940年代に使われていたようですが、耳を温めたり圧迫したり、手間と負担がかかる上に正確な数字が出しにくいためにあまり一般化しなかったようです。5cm四方の計測機を耳に装着する必要があったとのこと。わたしの親指が1.5 x 6cm弱くらいですから、親指3本を耳に引っ掛ける状態というと、、アフリカのムルシ族のような感じでしょうか。かなり大きいように思います。
その後、簡便かつ確実に酸素飽和度を計測する方法として1974年、日本光電工業株式会社・ミノルタカメラがパルスオキシメーターの原理を特許出願しています。3年後には商品化されましたが、全身麻酔中に患者さんの状態を評価する目的で1980年代にアメリカを中心に定着しました。
パルスオキシメーターも商品化された当初の本体はVHSデッキくらい大きかったようですが、今では少し大きな消しゴムくらいのサイズと小さくなり、値段も1万円しないものが市販されています。指先に装着すれば数秒程度で数値が出るし、一般的には信頼性の高い機器だと思います。息苦しさは本人がとても辛いのに、怪我をして大量出血したなどのように見た目が派手ではないことも多々あり、身体所見だけではわかりにくいところもあります。数値となって客観的に評価できるのは、治療する上でも重要ですよね。
便利の影に歴史あり。医療の時間的なつながりを感じるこの頃です。
ではまた!
(加藤基)
参考文献
Wikipedia パルスオキシメーター
<記事更新:2025年01月09日>