どのような乳がん患者さんがリンパ浮腫を発症しやすいのか、オーストラリアのグループの研究結果がBreastという学術雑誌に発表されました。「前向き試験」という、比較的信頼性の高い研究です。
研究グループは乳がんの手術前、術後4週間以内、術後6,12,18ヶ月の時点でのリンパ浮腫の有無を調べました。対象患者の241人はリンパ節切除5個未満、209人は5個以上でした。
おもな結果は次のようなものでした。
・リンパ浮腫を発症した患者の割合は、リンパ節切除5個未満切除の群で3.3%、5個以上切除の群で18.2%でした。
・リンパ浮腫を発症する危険因子は、リンパ節切除5個以上の群のなかでみると、術後12ヶ月の時点での上肢腫脹(オッズ比*13.5)、術後6ヶ月の時点での上肢腫脹(オッズ比*5.6)、腋窩への放射線照射(オッズ比*2.6)でした。(*オッズ比:起こりやすさの比。1より大きいと、それだけ起こりやすいと言えます。)
・術後6ヶ月、12ヶ月の時点での上肢腫脹はタキサン系の化学療法、肥満、術後4週間以内での上肢腫脹との関連が見られました。
・術後1年以内の上肢腫脹は18ヶ月の時点でのリンパ浮腫の強い危険因子でした。
この結果からわかりますように、ある程度リンパ節を切除した乳がん患者さんは、術後1年以内(とくに1年後の時点)でむくみがあると、リンパ浮腫になる可能性が高いようです。術後に一時的にうでがむくむことはよくあると思いますが、術後半年から1年経ってまだむくんでいる方は注意が必要と考えられます。
(参考文献)
Kilbreath Sl et al. Risk factors for lymphoedema in women with breast cancer: A large prospective cohort. Breast. 2016
http://www.thebreastonline.com/article/S0960-9776(16)30041-8/abstract
☆ リンパ浮腫とわかったら、早めの治療が重要です。とくにリンパ管静脈吻合術は早期の方が有効です。当院は、待たなくても手術が受けられるように、日帰りのリンパ管静脈吻合術(LVA)に力をいれています。詳しくは手術のページをご覧下さい。