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再生医療

2016/08/30
自家培養表皮
再生医療はこの10年どう動いてきたか、この先10年でどう動くかを見定めることができれば、わたしたちにとって再生医療の恩恵はより大きいものとなるでしょう。様々な領域の再生医療を様々な観点から検証します。
 
もうそろそろ10年が経ちますが、2007年、日本で最初の再生医療製品が発売されました[1]。ジャパンティッシュエンジニアリング社の自家培養表皮「ジェイス」です。「ジェイス」は患者さんの健康な部分の皮膚を少量採取して工場に運び、そこで培養して増やし、シート状の人工の皮膚を作成して病院に送り返します。皮膚を受け取った医師は、やけどにより皮膚を失った部分に移植します。この治療により重症熱傷患者の救命率が飛躍的に向上しました。
 
ジェイスはハーバード大学のHoward Green医師が1970年代に研究開発し、1987年に初めて臨床応用した技術を元にしています。われわれヒトを含めて、ほ乳類の皮膚はおおざっぱに分けて2層に分かれています(図)。
 
表皮図-01.jpg
 
表層は表皮ケラチノサイトといわれる細胞が積み重なった層、深層は主にコラーゲン線維からなる真皮層です。真皮層には少数の線維芽細胞を含んでいます。Green博士は、まずSwiss-3T3細胞と呼ばれる特殊なマウスの線維芽細胞をあらかじめ平面培養し、その上に表皮ケラチノサイトを蒔くことで薄いシート状の表皮を作ることに成功しました。Swiss-3T3細胞は、表皮ケラチノサイトに栄養を与えたり、増殖しやすい環境を作ったりする役割があり、フィーダー細胞と呼ばれています。表皮ケラチノサイトが育った後は、フィーダー細胞は死んで剥がれてゆきます。残るのは表皮ケラチノサイトだけです。
 
したがって、この再生医療製品は基本的に培養「皮膚」ではなく、培養「表皮」です。真皮を欠いているのです。本当の意味での培養皮膚というのは残念ながら実用化されていません。さらに言うと、皮膚には皮膚付属器といって、毛包(毛穴や毛根、皮脂腺のこと)や汗腺があり、神経終末や毛細血管、リンパ管も含まれています。したがって、われわれが作りえたのは、皮膚のごく一部であると言うことができます。
 
とはいっても、人類がはじめて培養という手法を使って人体の一部を再生するという、本当の意味での再生医療に成功した記念碑的な技術です。実験室の中だけであった技術を工業化して、人間に使えるまで製品化するということに、さまざまな障壁があったはずです。その障壁を越えるためにGreen医師の後、40年もかかったということであり、培養表皮の研究・実用化に関わった方々に頭が下がります。
 
真皮の再生医療製品については実用化されているものがあり、また別の機会に紹介したいと思います。また、毛包の再生医療は動物実験では成功していますが、臨床においては成功していません。この話もとても面白いので、また別にシリーズで紹介したいと思います。
 
 
 

 

 

 

 

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