「むずむず脚症候群」の方が増えています。
「増えている」といっても、以前はあまり医者にも認知されていなかったのが、最近ガイドラインが整備されて「診断される人が増えた」ということだと思います。アヴェニューセルクリニックにも、静脈瘤の患者さんに混じって「むずむず脚症候群」と診断された患者さんが時々いらっしゃいます。
「むずむず脚症候群」とは、夕方から夜にかけて脚の奥の方がむずむずしてじっとしていられず、睡眠にも影響をおよぼしてしまうという病気です。発症した方は、「足がむずむずして寝れないときの対処法」をインターネットで調べたり、実際に病院へ足を運ぶにしても何科を受診していいのか分からない方も多いのではないでしょうか?
「むずむず」する詳しい原因は不明ですが、これは神経が関連した病気とされています。脳からの信号として分泌されるドパミンという物質が、うまく働かないことが原因と考えられております。治療としては、このドパミンを作動しやすくする薬の内服を行います。しかし、薬の内服が無効な患者さん、もしくは薬の副作用が強い患者さんが一定数いて、そのようなケースでは治療が難しくなります。
近年、脚の静脈の逆流(静脈瘤または静脈不全といわれる状態)を治療すると「むずむず」の症状が改善するということがわかってきました。「むずむず脚症候群」の患者さんの22%に静脈の逆流があり、血管内レーザー焼灼術で静脈を治療すると98%の患者さんの症状が改善し、80%の患者さんの治療効果が長期的に持続したという報告もあります。これは静脈の逆流により下肢が鬱滞(うったい)して、それが刺激となり神経が「むずむず」するというメカニズムだと考えられます。さらに興味深いことに、静脈不全がなくても表在静脈(表面を流れる細いけれども無数にある静脈)を抜去するだけで「むずむず」が改善したという報告もあります。静脈不全がない正常のひとでも夕方になると足がむくむので、「むずむず」はほんの少しの静脈の鬱滞でも発症するということかもしれません。
現在、日本では「むずむず脚症候群」に対する治療は薬の内服治療しか行われていませんが、今後はレーザーによる静脈治療を併用することが一般的になると考えられます。内服治療が無効な場合、それが本当に「むずむず脚症候群だけ」なのか、いまいちど静脈に異常がないか調べてみたほうがよいでしょう。
<記事更新:2024年5月28日>